『細川ガラシャ夫人』からひろがる、和歌の世界

 
 6月1日から、企画展“『細川ガラシャ夫人』明智光秀の娘・玉子の「道ありき」”が始まります。
 今、大学のゼミで、新潮文庫版上下二巻の精読を進めていますが、女子学生に人気のテレビアニメ『刀剣乱舞―花丸―』(2016年)のエンディングで、細川ガラシャの辞世〈散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ〉が使われていたそうですね。
 その辞世はじめ、『細川ガラシャ夫人』全編を通して、和歌が多く引用されています。これは、史実に残されていたこととともに、綾子さんが、闘病時代から短歌に親しんでいたことも関係があるのではないでしょうか。
 
 父・明智光秀が命を奪われたあと、娘である玉子の身にも危険が迫ります。そのため、夫と離れて味土野(みとの)に隠れ住みますが、家族への想いが、次々に歌われました。

 ・忘れむと思ひすててもまどろめば強ひて見えぬる夢のおもかげ(下巻p106)

 また、そんな玉子に、夫・忠興も慰めの和歌を贈っていました。

 ・な嘆きそ枯れしと見ゆる草も芽も再び萌(も)ゆる春にあはむに(下巻p144)

 約2年後、ようやく夫との日常を取り戻しますが、女性が一人の人間としては生きづらい時代であった戦国時代、苦しさ、つらさは、さらに歌となってほとばしり出ていました。

 ・さだめなき心と人を見しかどもつらさはつひに変らざりけり(下巻p209)

 玉子の生涯と、その和歌を、展示パネルと小説で、ぜひ味わっていただきたいと願っております。

田中 綾