『ひつじが丘』に花を見て佇つ

水無月となりました。みなさま、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

三浦綾子記念文学館は、あたたかなご声援に支えられ、6月6日から開館営業を再開いたします。みなさまに安心してご観覧いただけるよう、いっそう入念に準備もいたしております。野外喫茶や氷点ラウンジで、初夏の旭川もお楽しみください。

さて、芝桜が見ごろの、札幌・羊ケ丘展望台の近くに行ってきました。ちょうど 先日、北海道新聞での連載コラム「新・北のうた暦」で、この一首をご紹介したのです。

作者の高坂百合子さんは、三浦綾子さんの実姉です。

 

ひと一人拒みきれずに惑ひつつ羊ケ丘に羊見て佇つ  高坂百合子

さっぽろ羊ケ丘展望台の芝桜が、目を和ませてくれる時期だ。

放牧された羊たちの姿を前に、しばし「佇(た)つ」作者は、長編『ひつじが丘』も書いた作家・三浦綾子の実姉。ここでは、人間世界の単純ではない関係性に戸惑いつつ、羊の無心なさまに心ひかれているようでもある。

今日もまた、迷える子羊の物語が紡がれているのだろうか。

(2020年5月26日掲載)

 

花々や羊たちの世界に比べ、なんとも複雑な人間世界……。

今回の新型コロナウイルスの感染対策をめぐっても、政治・経済・社会環境はじめ、これまであえて注視しようとしてこなかったものが、複雑に絡んでいることに気づかされました。

とはいえ、それにも増して気づかされたのは、文化や芸術が、私たちのゆたかで安定した精神生活のために欠くべからざるものということでした。

公共図書館がドアを閉ざし、ライブや観劇、映画鑑賞の機会を阻まれたここ数カ月、精神的に「あずましくない」状態が続いたのは、私ひとりではないと思われます。

劇作家・演出家の平田オリザさんは、「芸術文化は社会インフラ」と断言されました。基本的人権を持ち出すのは少々大げさかもしれませんが、ただ生きる、ではなく、よりよく生きる、という人間生活には、文化や芸術はまさに基盤の一つでもあるのですね。

惑いつつ、もがきつつも、よりよき明日のための一歩を選び取っていきたいと感じています。

※羊ケ丘展望台は、6月1日から営業再開とのことです。

田中 綾