新聞小説ってなんですか?

「三浦綾子の『氷点』や『泥流地帯』は、いわゆる新聞小説でした」と授業で話したところ、学生から素朴な質問がありました――「新聞小説ってなんですか?」。
はっとして聞き返したところ、「新聞小説」なるものを、時事問題やニュースを盛り込んだ小説かと思ったそうなのです。なるほど、日ごろ新聞を手にしていない学生には、新聞の連載小説という存在自体が遠いものなのですね。

そこで、学生たちが新聞に日常的に接しているか、アンケートをとってみました。実施日は2021年5月14、15日。回答数は106 件で、対象は大学3,4年生。社会人が数人混じっています。

アンケートのタイトル:【新聞を購読していますか?】

・購読している(家族が) 55人 51.9%
・購読している(自分で)  2人 1.9%
・時々、コンビニなどで買う 1人 0.9%
・家族が購読しているのですが、家族会員制を利用して電子版を利用させてもらっています。  1人 0.9%
・購読はしていないが、新聞社のネットニュースをよく読んでいる。  40人 37.7%
・購読はしていないが、図書館などで読んでいる。 3人 2.8%
・読まない。また意図的に遮断している。 1人 0.9%
・購読していなく、読んでいない。  1人 0.9%
・新聞は買っていないし、読んでません。ヤフーニュースなどはみます。 1人 0.9%
・Lineニュースはよく見ています。 1人 0.9%

以前から言われてはいましたが、若い世代のほぼ半数が、家庭で新聞紙に触れていないようですね。もしかすると今後、「え? 新聞って紙なんですか?」という世代が登場するかもしれません(?)。

メディアとしての新聞は、今後さまざまな変化もあるでしょうが、「新聞小説」というジャンルは、日本近代文学史においてたいへん重要な存在です。その歴史を振り返るときに参考になるのが、こちらの2冊です。

・関 肇『新聞小説の時代 メディア・読者・メロドラマ』新曜社、2007年
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b455922.html

・東海大学文学部叢書『新聞小説の魅力』東海大学出版会、2011年
https://www.press.tokai.ac.jp/bookdetail.jsp?isbn_code=ISBN978-4-486-01915-2

そもそも、明治以降の「新聞」の魅力は、「読みもの」「続きもの」「おもしろいもの」でした。毎日届けられる、わくわくする娯楽(しかも、挿絵つき!)で、識字率の高い日本の読者の、ニーズと嗜好に合った媒体だったのですね。

“文豪”として教科書でも採択率の高い夏目漱石は、プロの“新聞小説家”でしたし(朝日新聞)、尾崎紅葉『金色夜叉』(読売新聞)、徳富蘆花『不如帰』(國民新聞)、昭和では松本清張『砂の器』(読売新聞)、平成では渡辺淳一『失楽園』(日本経済新聞)など、ベストセラー小説を生み出す磁場でもありました。

今後、文学史用語として「新聞小説」は残るはずですが、その魅力、影響力も、丁寧に説明していかなければと襟を正しています。

田中 綾