河﨑秋子さん(三浦綾子文学賞受賞作家)の最新作、『絞め殺しの樹』

河﨑秋子『絞め殺しの樹』小学館 2021

毎年年始には三浦綾子の小説を読む、という習慣がありましたが、この年末年始は、河﨑秋子さんの5冊目の小説『絞め殺しの樹』(小学館) https://www.shogakukan.co.jp/books/09386626 を読んで、一年の計としました。
2020年に4冊目となる『鳩護(はともり)』(徳間書店) https://www.hyouten.net/?pid=156503060 が刊行されたばかりですが、早くも2021年末に刊行となった、『絞め殺しの樹』。帯文には、「三浦綾子文学賞でデビュー後、新田次郎文学賞、大藪春彦賞を連続受賞。最注目作家、入魂の大河巨編!」とあります。

ときは昭和。北海道根室の地で、降りかかる苦難の道をひた歩んだ、女性ミサエの物語。
ミサエを巡ってさまざまな人物が関わっていくのですが、「今度はいい人かな? ミサエを助けてくれるのかな?」と、ミステリーかサスペンスのように、はらはらしながら読み進めました。
コロナ禍でもあり、保健師として働くミサエの職業意識にも、感じ入るシーンが多くあります。

2019年に、第21回大藪春彦賞を受賞した『肉弾』(2017年) https://www.hyouten.net/?pid=131037597 では、最終章「狗命尽きず」で、「他の誰が望んでなくても、生きてやれ、お前ら。絶対に」と、「生」そのものに価値を置く発想が力強く描かれていました。この『絞め殺しの樹』では、そのメッセージがいっそう強さを増しているような印象を受けます。

P260「死ぬまでは、かろうじて生き続けるしかない。そのためだけに歩いた」

P278「自分の不幸に寄りかかり、そこから養分を得て生きていたのは、自分自身だ。
『わたし、まだ、死ねない』
まだ死ぬべき時ではない。自分は不幸なのだからと楽になっていい時ではない筈だ。
(略)
立てる限りは立つ。死ぬ時までは生きねばならない。」

岩手県在住の歌人・小笠原和幸さんの〈行く秋の風はさしづめ空念仏(からねんぶつ)/死ぬまで死ぬな死ぬまで生きろ〉(歌集『風は空念仏』2003年)という一首も、ふいに思い出しました。

ちなみに『絞め殺しの樹』は二部だてで、二部は雄介という青年が主な視点人物です。
そして、一部・二部ともに登場する「猫」という隠れ主人公(=もしかすると、本当の主人公かもしれません?)にもご着目を。

※河﨑秋子さんの、北海道新聞電子版連載コラム「元羊飼いのつぶやき」は、こちらからどうぞ→ https://www.hokkaido-np.co.jp/column/c_weekly_column/akiko_kawasaki/
『颶風(ぐふう)の王』(2015年、三浦綾子文学賞受賞作) https://www.hyouten.net/?pid=91722402 も併せてご覧ください。

田中 綾