「くるくると」

『母』(角川文庫)

師走。年末のお掃除など、みなさまはもう始めていらっしゃるでしょうか。
大掃除の時期になると思うのが、三浦綾子の小説にあらわれる、「くるくるとよく働く」という表現です。

・「くるくるとよく働く、金がたまる……」(干支占い? をする五十過ぎの男のセリフ)

『続 氷点』上巻「たそがれ」

・「家の中で掃除したり、料理をしたりして、くるくると働くことのほうが、好きなんですよ」(啓造が、妻の夏枝を評したセリフ)

『続 氷点』下巻「石原」

・幸蔵は、くるくると働く正直一方な若者でね(小林セキの夫の兄の、長男について)

『母』第一章

・それ便所の掃除だ、やれパンを詰める仕事だ、ほれ配達だと、くるくると、よく働いたわけ。(多喜二の商業学校時代について)

『母』第三章

・ご飯炊きしたり、掃除したり、流れ木拾いに行ったりして、ほんとにくるくるとよく働いた。(タミについて)

『母』第四章

・おっかさんの看病と、妹たちの世話と、仲居の仕事と、くるくるとよく働いたもんだ。(タミについて)

『母』第六章

・よくくるくると働き、ひたすら戦友である竜太の面倒を見る姿(近堂一等兵について)

『銃口』下巻「鎧戸 二」

こまめに体を動かし、掃除や洗濯、家族の世話など、よく気がついて丁寧に行う姿が思い浮かびますね。

恥ずかしながら、私は掃除や片付けが苦手で、毎年、師走になると「ああ~もっとこまめに掃除しておけば良かった……」と反省を繰り返しています。そういえば、去年もため息をつき、一昨年も同じようにため息をついていたような(学習しないヒト)。

そのせいか、三浦作品にあらわれる「くるくるとよく働く」という言葉は、ことのほかお気に入りです。連載中の「あたたかき日光(ひかげ)――光世日記より」にも、さりげなく挿入してみたのですが、お気づきでしょうか……?

まばらな家並みにバス停がぽつんとあり、その近くの三浦商店に、くるくるとよく働く四十代らしき「おばちゃん」の笑顔があった。

「あたたかき日光(ひかげ)――光世日記より」 第一章「一千万円懸賞小説」1

『氷点』デビュー以前の「くるくるとよく働く」綾子さんの姿を想像しながら、今年こそは、少し早めに掃除に手を付けたいと思います。

田中 綾